第十五回センチメンタル・スケッチ・ジャーニー
金沢 花街 
石坂

 


 〜路地のコップ酒〜

その日、冬の寒い日だった。紛れ込んだ路地にも屋根にも雪が積もっていた。

入社して、まだまもない頃、自分の将来に自信を持てなかった。人生に迷っていたのだ。

ふと思い立って大阪からこの金沢に一人でやってきた。何故か油絵の道具を抱えて。

石坂のこの一帯は、昔、にしの茶屋街の端だった。近くには犀川が暗く流れている。

夕暮れ迫る路地の奥で手を凍えさせながら雪の路地の絵を描いた。

そして稚拙ながらひと通り仕上げると路地の軒先の赤ちょうちんに導かれ、

熱燗のコップ酒を呷った。七輪の上の網で焼いた焼肉とともに・・

誰にも知られずこの北の国の路地でひとり酒を呑むほろ苦さ!

三十年以上経った今もその密やかな歓びの感覚を覚えているのだ。